雨水のうぐいすの巻

二十四節季については http://togetter.com/li/25429

立春「ハハハ、あれは嘘だ。まさか騙されるとは思わなんだ」一番の年長であり、人をからかうのが趣味。ネコのように突然現れ、ネコのようにいつのまにかいなくなる。彼女がいないときに限って、細身の美しい白猫がいるので、実はネコが化けているんじゃないかという説まである。 #24sekki
雨水。立春さんの弟子。粋を自称する人間の家の傍に行ってはうぐいすのマネをして「おや、もう春ですか」と騙されているのを見て、馬鹿にして笑う。立春さんには「小さな嘘ですね」と言われるが止められてはいない。たぶん嘘自体が粋だからだろうが、雨水はそのことをわかっていない #24sekki

   
雨水「立春さーん!(ぼふんっ)」
立春「うわっ雨水、きみは神出鬼没だねぇ」
雨水「そりゃあ、立春さんがいるところ雨水ありと言われますから!(だれも言ってない)」
雨水の特技は春が近くなるころ、うぐいすのまねをしては近くの自称粋人をうならせることだ。
雨水「立春さん、今日も私、うまいことできました!二丁目の角家なんて、ウグイスが来たって大騒ぎ。家族総出で二度目に鳴くのをじりじり待ってるんですよ。」
立春「風流な家だねぇ」
雨水「どうでしょう?もちろん私も血の通った人間ですから、二度目も鳴いてやりましたけれど、ずいぶんとおおげさだと思いました。家族総出でうぐいすを待ち伏せるとはあまり粋ではありませんね、蜂がまぎれこんだ食卓みたいじゃありませんか」
立春「ふーむ、それなら、その家の向かいの隣はどうだろう。そこはたびたび短歌を読み合って、その中でももっとも上出来なのを玄関に飾って来客に解釈を言わせる習慣がある。歌の最後には最粋と書いてあるが、これが彼等の雅号らしい。歌を家族で愛するとは、いやまったくすばらしいことだと私は思ったものだよ」
雨水「それは!……それはまたおどろくべき無粋ですね、騙しがいがありそう……、ではさっそく……」
立春「おや、もう行くのかい」
雨水「善はいそげといいますから、では立春さん、また」
立春「ああ、最高のうぐいすを聞かせてやんなさい」
いい修行になることだろう、と立春さんはつぶやいた。
雨水、あの家の向かいの隣にやってくる。
雨水(ここか、なんだか家は小さいし、庭も手入れがされていない。短歌など詠む余裕があるとは思えないなあ。まあとりあえず、)
「ほー…ほけきょっ」
爺「ややっ?!」
雨水「(ふふふ、食いついた!)ほけきょっ」爺「ほう、うぐいすか。」
雨水「ほー…」爺「最後はもう少し高めにすると、もっと本物に似てくるぞ」
雨水「ほきょっ?!(あっ!しまったー!)」
爺「こうじゃよ、こう、ほーほけきょ」
雨水「似、似すぎだー!」
(中略)
爺「こんな若いお嬢さんだったとはなぁ」
雨水「鳥類博士だとは存じず、試すようなことをして申し訳ありません…」
雨水はすっかり立春さんにかつがれていたのだ。
この家に住むのは短歌をたしなむ家族ではなく、鳥にうるさい老人だった。
雨水はこの老人にさらにリアルに聞こえる「ほーほけきょ」を特訓してもらったのだ。
婆「この人を訪ねる人だなんて、最近いませんからむしろありがたいことですよ。立ち話もなんですから、どうぞ、お茶でも。」
雨水「いえ、そんなお気遣いなさらないでください!私は…そろそろ失礼させていただきます」
婆「あらもうお帰りに?」
爺「またいつでも来なされ、鳴き方ぐらいしか教えてやれんが」
雨水「はい、ありがとうございます。あ、一つおうかがいしたいのですが、立春という者はこちらに伺っているのでしょうか?」
爺「いや、婆さんが言ったようにわしの所に人は来ないよ。来るのは鳥の捕まえ方を聞きにくる、白い猫ぐらいなものさ」