アンチヒューマン

twitterでもお茶にごしで、昔の詩篇を抜粋したので、ここにも転載しておきます。2008年の雑誌真夜中No2に掲載された小詩集「6個目の心臓」の中の「アンチヒューマン」という詩の最終連です。
  

(白い森、白い肌の森、息をするだけの鳥、目の中に黒い盲点。赤い血がめぐる森、黒い髪がただよう森、白い森。まるで白い雪の冬の森、夏の暖かい中に静かにゆれた森。うらぎりかなしみとか、静かなものだけがつもっていく、あたたかいままの早死にの森。
きみの森、目の森。見詰め合う瞬間、必死でかきわけて外に出ようとしたあの森。きみは左手を左へ、右手を右へ、かきわけ、森は血を流し、森は血を流し、治る。)
森のどまんなか、真っ赤なそれ、つくつく鳴りながら、きみのことを永遠にうらまない。
静かな森、ひとつだけの音。