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現実の国から。

河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの新刊として、「正しい目玉焼きの作り方」という本が最近出たらしい。「風邪のときに作るおかゆがマズイ、服を洗濯でダメにした、穴のあいたくつ下をはいている……そんな人のために、洗濯・料理・片付けと掃除・裁縫の基本のきを学ぶための一冊」という内容。

正しい目玉焼きの作り方:きちんとした大人になるための家庭科の教科書(14歳の世渡り術)

正しい目玉焼きの作り方:きちんとした大人になるための家庭科の教科書(14歳の世渡り術)

  • 作者: 毎田祥子,井出杏海,木村由依,クライ・ムキ,森下えみこ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こういう本が「14歳の世渡り術」として出るの本当に正解だし、愛より夢より成績より家庭科が救ってくれるものって人生のなかに、ほんと、たくさんあるって思うよ。
   
本の告知を見た時、なんか感動してしまった。大学進学で一人暮らしを始めた子がうまく友達もできなくて、でも地元には虚勢を張って、そんなときに風邪をひいて寝込んでしまって、それでもふらつきながら自分で作ったお粥がちゃんと美味しいって、それは、ものすごく救いじゃないですか。孤独になることぐらい生きていればいくらでもあって、ひとりぼっちになることなんて、生きていればあんがい当たり前のできごとなんだとわかってくるけれど、それでも私には私がいるのだということ、そのことも同時によくわかる。ひとりぼっちになろうが、生きていかなければならない。そして生きるということは、別に誰かと一緒にいるかとか、家族を作るとか、夢を叶えるとか、そういうことではなくて、ただ生活を重ねていくことだと思う。そして、しあわせなことに、生活をゆたかにしていくのは、いつだって自分自身なんだ。おいしいもの、きれいな部屋、ここちよいおふとん。生きる、ということにつまずくとき、それらが一番やさしく、救いになってくれる。その可能性は決して奪われない。
   
見た目とか健康とか才能とか性格とか、そういうのは、こうしたら幸せになれるかもってことはわかっても改善など簡単にはできない。でも生活だけはそうじゃないから。それなのにちゃんと、身体や人生につながっていくものだから。そこを世渡り術としてちゃんとしましょう、と14歳に向けて言っているのがすてきだと思った。私に14歳の姪っ子がいたとして、大人になるにはまずは生活力を付けましょう、家庭科をがんばりましょう、なんて私は言えないと思う。思いつけない。これが本当に大事なことなのに、夢だの愛だのの話ばかりしてしまうだろう。子供にとっての「未来」というのはファンタジーだと思う、フィクションだと思ってしまう。だから、彼らは現実の話ができないし、そのことを羨ましく思う私もまた、彼らに合わせてファンタジーばかり見てしまう。でも、大人という時間が現実になった私たちから伝えられることって、ご飯の作り方、洗濯の仕方、掃除の仕方、そういう、なによりも現実的なことなのかもしれないな。
   

   
  
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