ネガティブ極めて、ポジティブへ。

関西ローカルの素晴らしい番組といえば、ナイトスクープが有名だけれど、私はちちんぷいぷいの「ロザンの道案内しよ!」もお勧めしたいわけです。ロザンというのはもちろん、あのクイズキング宇治原さんのコンビのことでございます。関西では、ロザンといえば宇治原さんより、相方の菅ちゃんのほうが印象が強いです。というのも、このちちんぷいぷいという関西ローカル番組のワンコーナー「道案内しよ!」(求む全国放送)での菅ちゃんが尋常ならざるポジティブだからです。このコーナー、内容は大変単純で、大阪駅でロザンの二人が迷子になっている人に道案内をする、というだけのもの。登場するのは、就活生や、旅行者、ライブに行こうとする女の子、おねえちゃんの卒業式に忘れ物を届けに来た女の子、などなど、関西によくある素人さんインタビュー系のコーナーなのですが、ずかずか土足どころかローラースケートで踏み込んでいき、素人さんのハートを開いていくロザン菅さんの強靭な精神力は他ではなかなか見られないものであり、また、これぞ「ポジティブ」と思い知らされるレベル。もう7年ぐらい(多分)このコーナー続くのも、当然、っていう感じなのです。
  
「ポジティブ」というのは才能です。私は以前、アンタッチャブルの柴田さんがポジティブ代表としてアメトークで言っていた、「こんなことしたら嫌われるかもとか不安に思うのは、現時点では自分が好かれているに違いないと思っているからだ。最初から嫌われていると思っていたら不安にも思わないはずだし、ポジティブに行動できる」みたいなこと(言葉は違ったかも。意味はこんな感じ)をツイッターで引用したのですが、菅さんのポジティブもそれです。決して、「めげない」とか「くじけない」とかそんな甘っちょろいものではなく、「めげる」という可能性などそもそもない。めげるのは、「受け入れられるはず」という期待があって、それが裏切られるからだし、そこを期待していないなら、「めげる」わけがない。自分は嫌われていたっておかしくない、知られていなくて当然、みたいな、かなりビターな精神状態で「だから、何も怖がることはない!」と発揮されている強さ・明るさなのです。特にそれがわかるのが、この道案内コーナーで外国人観光客を案内するとき。日本に来たばかりで、ロザンがタレントだなんてもちろん知らない警戒しまくりの観光客相手に、英語力があまりない菅さんは、文法を全て無視し、知っている英単語を並べまくり、コミュニケーションをやりきります。基本的に彼は最初、「from?」と聞きます。どこから来たん?です。そして「How long Japan?」と聞きます。「何日間日本に滞在するん?」です。直訳だと「日本の長さは?」とかになりますが、うそみたいなことに85%、これで通じます。さらに前は、スキーしに北海道に行くというアメリカからの観光客に、なんで北海道のスキー場を知ったの?口コミ?と聞こうと思ったらしく、「クチコ〜ミ?」って聞いた後、当然通じないので、「Talk,Talk,Talk,Talk…」と、口コミについて説明をしていました。通じていました。「そうそう、友達に聞いたのよ」みたいな返答を得ていました。なんなのでしょう。文法を正しく、とか思っている自分がばかばかしくなってきます。菅さんのコミュニケーションは、英語ですらポジティブなんですよね。「通じなくて当たり前」という感覚が下地になっていて、だからこそ正しく文法を使ってかっこよく、なんて思わずに、知っている単語を全部投げつけて全力でコミュニケーションをする。文法頑張ってやって通じなかったときは、頭真っ白になりますが、菅さんはそんなことはない。伝わるまで畳み掛けます。なんていうか、ポジティブの原点には、完全に甘えのないネガティブがあるのかなあ、などと思ったりもするのでした。