音楽が退屈なものに落ちていく

歌詞はいいけど音楽は普通だと思っていたバンドが神呼ばわりされていたり、青春を一緒に生きたバンドの初期音源を単純すぎてつまらないと言われたり、人の音楽の趣味にとやかく言ったり、知識を披露しようとしたり、人間は音楽に詳しすぎて好きか嫌いかを語り合う余裕すら失くしてしまった。音楽を聴くときは植物や風といっしょがいい。誰のセンスがよくて誰のセンスが悪いわけじゃない、自然界はそんなこと興味ないだろうから、きっと正解は用意されていない。音楽の話をするふりして、みんな自分の話がしたいだけ。自分を認めてほしいだけ。そのあいだ音楽はちっとも潤わない。十代のころそう思って、音楽の固有名詞を口にすることをやめた。