誰もが自分が大事

「私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬をしりぞけたいと思うのです。」(夏目漱石「こころ」)

「あのころの生き方を あなたは忘れないで あなたは私の青春そのもの」(松任谷由美「卒業写真」)

人は自分以外の人間をどのみち「もの」としてみるしかなく、実は誰だって自分の思うように相手が発言し動いてくれたらいいのにとどこかで思っているものである。好きだ、愛していると言う人間は、相手が愛したときのままの姿でありつづけることを望んでいて、それを強制しがちである。たとえ強制せずとも、その人が愛したころと変わってしまえば愛は失われ、侮辱がかわりに訪れる。それは強制と何が違うのだろう? 人が人を人として尊厳ある命として純粋に扱うことは不可能だ。自分自身が命である、人であると理解しきれていない人間には、永遠に不可能なことだ。