時間は一本道じゃない

アイドルやポップカルチャーにおけるスターとか、そういう人って基本的に10代後半〜20代前半が最盛期であって、だいたい20代後半には伝説になっているわけで、たとえば私は今20代後半だけれど、同世代のテレビスターって言ったらやっぱり松浦亜弥さんとか上戸彩さんとか新垣結衣さんとかになるわけですよね。もう、のぼりつめていることは明らかで、これからの時代だぜ!っていうかんじはしない。でもこの人たちが、活躍していたテレビとかの世界において、たとえばドラマで聴く音楽(テーマソングではなくてBGMぐらいのかんじ)って調べてみるとちょっと古いんですよね。すでに解散しているバンドの音楽が散々使われていたりとか。私が高校〜大学生ぐらいのときってコント番組とかバラエティーで、ブランキーを聴くことが非常に多くて、でも当時すでにブランキーは解散していたわけです。で、なんでかっていったら、ちょうど彼らがイカ天でて、それからライブとかやって、ってなったころに18〜24ぐらいだった人が、やっと30代後半ぐらいになって、テレビ制作とかそういう世界で「決定権」をもつ立場になっていたんですよね。あと、中高のころってとにかくテレビがブルーハーツまみれだったと思っていて、それもたぶん、同じ。ブルーハーツが青春だったひとが、テレビとかカルチャーの裏方としてそれなりの権力を手に入れてきたから。たとえドラマに出ている人が、当時の私の同世代であったとしても、その設定や美術や音楽を作り上げている人たちの血みたいになっている青春は、どうしてもだいたい15年ぐらい前のものだった。
  
たぶん、テレビとか舞台とか、たくさんの人が関与して、一つの作品を作り上げていくカルチャーにおいては、こうした違った世代の「青春」が混ざり合うことがとても重要な意味をなす。中心にいるのはまだまだ若くて、綺麗な感じのアイドル的スターだけれど、その土台を固めるのは、すでに熟練になりつつある中堅の「青春」で、そうしてその奥にはその中堅たちを育てたであろうもっと昔の人たちの「青春」。めちゃくちゃ混ざっているんですよ。で、何が言いたいかというと、20代後半〜30代前半っていうのはそのどっちにも属さない時期なんです。そろそろ飛び級みたいに権力持ち始める人はでてくるけれど、まだまだ上世代がブイブイ言わせていて、かといってポップスターはもう若い人がいて、んん?!なんか私の年齢のカルチャーの声が最近聞こえないよ?!(なんだこのセリフは)というようなことを考えたりね。でもどっちかというと下積み積んでやっていかなきゃいけない職種の人は、ちょうどこの時期に出てくるんじゃないかとおもいます(いやこれは私の妄想なんでなんのデータもないし、単純に下積みが必要な仕事(歌手とか、漫画家とか)は時間かかるだろうなっていう超単純思考なのですが)。最近は、「この曲いいな」「このデザインいいな」って思ったら同世代だった、っていうことが多くなってきた。なんかこわい。なんだろう、焦る世代なのかな。一部の女の人も「友達が〜結婚とかして〜焦る〜」とかいうし、そろそろ友達とか周りの誰かが夢を叶え始める段階だし。テレビじゃ自分より若い子が、アイドルとして踊って歌って、映画では主役やって。そろそろ焦らないと、置いていかれますよ感がすごいなあ、って思います。でも一方で、ポップカルチャー先導してたテレビが、普通に昔の音楽とか流したり、昔の漫画を実写化したりしていて。近くにいる他人と比べたりすると相対的に焦りはするけれど、結局人類丸ごとを俯瞰で見たら、想像以上になんにも進んでいないというか、こう、局所的には進んだり、逆に戻ったり、しているけれど、平均値は変わらないのかな、って思うのです。意外と、文化における時間というのは一本道ではなくて、曲がりくねって、戻ってみたり、それから複数が絡んでみたり、でも遠くから見ると大きな円環を描いていたり、なんか、そういうかんじなのかもしれません。と、よくわからない比喩を言ってみたりしましたが、まあなんていうか勝手に年はとるし、権利もつひとはもつし、夢叶える人は夢叶えるし、でも、総合すると別に捕まえなくちゃいけない「今」なんぞどこにもないというか、結局時間を進めたり戻したり曲げたりするのは人なので、その「人」として、「今が今なんじゃ!」といえば「今」になるのではないのかなとか思ったり、きっと時間を掴むより、その「人」になるほうが難しいんだろうけど、でも時間制限は別にないような気がします。