本屋戦争

本屋とは広いほうがいい。品揃えは多いほうがいい。発売日に入荷どころか発売自体知らないなんて! と思っていたが買うものも決めずに大手に行くと、特に文庫なんてどこになにがあるのかもわからない。そしてそのせいで狙いをさだめてから本棚に向かわなければならないから出会いなんてものもない。出版社で分けておくのはそりゃあ売る側にとっても、いろいろこだわりがある読書家にとってもいいのだろうが、ふとなにか読もうかなと思うような素人には、それぞれの出版社で50音順をさぐる作業を繰り返せねばならずたいがいしんどい。あげく、見つからない本を尋ねてみたら、あっちでフェアやってるんでー、とか言われる。あっちでフェアやってるんで本棚には置いてません、というのは道理が合わない気がする。けど気が弱いので「あ、ほんとだー、すみません」とこっちが謝る。なにかむずがゆい。
昔は図書室に頼っていたから(といってもあんまり使用してなかったが)、こういう本屋のシステムにドギマギしてばかりだ。CDショップは海外と日本で分けて、ジャンルでわけたらあとは会社なんてごちゃまぜで並べてあるのに。それに慣れているからなのだろうか、あのナントカ文庫分けにどっとつかれて、あげく違うところから同じのが出ていてどっとつかれる。先日はせっかく大手本屋に行ったのに買ったのははじめの目的だった一冊だけで、他にも買う予定だったのに、買いたいと思えるものが見つからなかった。いや見当たらなかった。あるはずなのに、すれちがうことができなかったのだ。
それで最近地元の小さな本屋で珍しく文庫売り場なんて見てみたら、あれほど大手で大々的にやっていたキャンペーンも小さな本棚の一段に圧縮されていて、なのにそのおかげでまず一冊目に出会った。そしてそのつぎに二冊目。これはキャンペーンに含まれていたことすら知らなかった。それで最後に海外文学のほうへ行ったら、なるほど三冊目。あっさり手に取っていたのだ。品揃えが悪いのはかわらないがそれはある意味厳選ともいえるのかなと思いつつ、大手より倍の金額を払って帰った。