狂わす人、狂わされる人

月島が好きでそのことは以前にすばる2022年4月号で書いて、それこそ「見届けたい」と書いたから、最終回を読んだ後、月島について改めて書こうと思いました。また、ゴールデンカムイの作品そのものについては以下の記事で書きましたのでぜひそちらもよろしく…

この詩はどの本に収録されてますか?への答え

以下は、過去詩集の収録作品タイトルの一部です。たまに「この作品が入っている詩集がわからない」と言われることがあるので、よく聞かれるタイトルや、よくネットで引用されているタイトルを記載しました。ただ私は同じタイトルで複数の詩を書くこともある…

朝マックという名の銃弾

(某誌に依頼されて書いたのですが、いろんな事務手続きですれちがいが起きて、掲載される場所をうしなった原稿をここに載せます/こんな原稿を載せてくれるのか、みたいな文言がありますが、原稿を渡す前に事故で掲載がなくなったのです) 他人がガッツリし…

言葉を、言葉が越える。

2020年は、詩集三部作『死んでしまう系のぼくらに(韓国語版タイトル:恋じゃなかったものは星)』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『愛の縫い目はここ』の韓国語版が発売された年でした。정수윤(チョン・スユン)さん訳で、마음산책(マウムサンチェク…

「ただの愛」

先月、映画『マティアス&マキシム』に宛てて詩を書く仕事をいただいて、でも映画を観た後はその映画がとても好きだから書きたい、という気持ちしかなかった。詩は、二人の映画の中にある関係性を何度も思い出して、静かな湖の底を見るように、奥へ光を届ける…

書かれる恋

『一等星の詩』という本で保坂和志さんが書いてくださったサザンの歌詞についての文章。恋をすることと、歌詞の中にある恋愛について書かれていて、「自分の恋愛よりずっとたくさん歌の歌詞を経験した気がする」という一文がある。歌詞の中にある「恋」こそ…

きみ推しという詩

ユリイカ「女オタクの現在」特集に詩を寄せています。 オタク、それから推しという存在について考えたときまず思ったのは「推しのいる幸福」であり、オタクという存在に投げかけられる「幸せになれない」という外部からの「余計なお世話」な視線でした。「私…

朝マック詩人

‪最近出たBRUTUS「最高の朝食」特集にエッセイを書いているんです。「最高とか言われても私に書けるのは朝マックぐらいなんですけど…」って言ったら「むしろそういうのがいいんです!」って言われたので朝マックについて書きました。そういうのがいいんや!…

12年前に書いた原稿

このエッセイは2008年10月に福音館書店の『あのとき、この本』に寄稿した原稿です。来週、初の絵本が発売になることもあり、久しぶりに再読しました。良かったら読んでみてください。 愛情のアルバム 最果タヒ 私はいまだに絵本の教育的役割が理解できていな…

感傷が嫌

しんどい、なー、しんどいとなんで全部が全部嫌になるのかな、別に誰もこっちなんて見えてないんだけど、過ぎていく時間も他人も自分を捨てて行ってしまう感覚というか、たぶんしんどくていろいろ手放したところに残る感覚が苛立ちとか不満とかなのかもなー…

飽きてOK

‪ずっと書き続ける作家を、読み手がずっと好きでいるのはむしろ難しいことだと思う。だから、好きじゃなくなったとか、昔の方が良かったと言われるのはすごく、すごく自然なことだ。さみしいはさみしいけど。互いに変わっていくし、その方向性まで同じことな…

しんどい

学校の授業とかで、差別について学ぶとき、それから日常において差別や偏見について話すとき、「差別をしてはいけない」という視点で語られることがほとんどで、「自分が差別される」ことに対してどうしたらいいのか、話されることは少なかった。あなたは差…

不自然による不自然のための不自然なコミュニケーション

人に気を使ったり使われたり、顔色を見たり見られたりすることが苦手で、誰に嫌われてもいいし好かれてもそれにそこまで価値を感じていないという態度を他人にいくらでも見せられる人は、自分を貫いてかっこいいなと思うが、誰に嫌われてもいいなら私なら誰…

故に我あり書店

(この原稿は、ちくまでの連載エッセイの冒頭に、新たに後半部分を書き足したものです) この前、対談をしている時に、苦手な本とか良さがわからない本が、ネットとかSNSとかで好意的に紹介されていたら、本当は違うのに、どうしても世の中全てがそれを勧…

インターネット蕁麻疹

書くことは孤立することなのだと思っていたのに、いつの間にか孤独なことだ、ということになり、孤独は遠くの誰かと共振し合うように誤解をし、それらは何かを埋めていくように思えて、本当は何も埋めてなどおらず、そのことに気づくことができないと、空気…

大丈夫、嫌いだよ。

誰のことも嫌いだな、と思うことは時々あるし、そういう日のために私は昔誰もいない図書室に立ち尽くしていたのだと思う。誰のことも嫌いだけど、誰も私のことを知らないと、本に囲まれるとよくわかる。百年以上前の本、海外の本、死者の本。嫌いだからって…

「銀河の死なない子供たちへ」下巻

施川ユウキさんの「銀河の死なない子供たちへ」下巻に、帯コメントを書かせていただきました。 きみは、どうせ死ぬのに、 どうして、誰かと共に生きるの。 愛でも希望でも諦めでもなく、 そこに「勇気」という答えをくれた、この作品は宝物です。 私は帯に言…

ハートネットTV「ぼくの日記帳」

夏休みを迎えて、少しだけ呼吸が楽になった、それでも、その時間はいつか終わってしまうのだ。痛みの存在はこんなにもよくわかるのに、どうして、それに対する言葉や行動は、なかなか見つからないのだろう。NHK「ハートネットTV」では、今日から「ぼくの日記…

お前が見るもの、みなお前。

‪これは感情の一種だと思うんだけれど、「何かを発したい」「しかし何もここには無い気がする」という衝動に襲われることがあって、多分大きなトンネルか筒が自分自身で、風がそこを通り抜けることで、声でも歌でも無い音が発せられるような感じ。そういう時…

言葉と、言葉の形について。

言葉というのは言葉単体では本当は存在ができない。声とともに、波としてこの世界に流れ込むか、文字とともに、結晶としてこの世界に流れ込むか。どちらにしても、声や文字の形によって言葉は、言葉以上の何かに変容するし、その影響を無視することはできま…

宇多田ヒカルがいた20年/「初恋」と「First Love」

「宇多田ヒカルを聴いて、思い出すのが校庭の匂いなら、きみの幼少期は最高なもの。」 この一節が入っている詩を書いたことがある。私は小学生の頃、生まれて初めて買ったCDアルバムが「First Love」だった。お小遣いほとんど使って買ったそのCD、触る時しば…

千年後の百人一首

生まれて、最初に、ああわたしも言葉を覚えようと決めたのは、言葉がどうしても必要だったから。当時のことは覚えているわけもないけれど、伝えたいこと、伝えなくてはいけないことが多すぎて、あわてて言葉に向き合ったのではないかなあ、なんて思う。そう…

愛の縫い目はここ

更新滞りの介!申し訳ないの介!(遊んでたわけじゃないんだ!) おひさしぶりのタイミングでなんなのですが、明日7/27、新詩集『愛の縫い目はここ』が発売になります。 『死んでしまう系のぼくらに』と『夜空はいつでも最高密度の青色だ』に連なる詩集3部作…

それでも町は廻っている

漫画「それでも町は廻っている」が終わってしまった。私はこの漫画が本当に好きで、手放しで「好き!」と空に向かって言いたいぐらいに好きで、だからこそ、終わってしまったら私は本当に心に穴が開いてしまうのではないか、と不安で不安で、その悲しさで泣…

ファッションいいなファッションいいなファッションいいな!

ファッション誌「SPUR」で1年間詩の連載をやっていました。いました、というのは今発売中の3月号に最終回が載っているからなんですが(終わってしまうのさみしすぎるーあーああーげほげほ)、それはともかくとして先日、美容室で読んで、忘れらなくて、み…

ご挨拶2017

初詣というものは、無事に一年を終えたお礼を伝えに行くものだというふうに小さなころ教えられて、そのせいかお願いごとをするようになっても、「がんばりますので、努力が報われます様に。」というのが定番と化していた。無邪気な願いというものを(「努力…

現実の国から。

河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの新刊として、「正しい目玉焼きの作り方」という本が最近出たらしい。「風邪のときに作るおかゆがマズイ、服を洗濯でダメにした、穴のあいたくつ下をはいている……そんな人のために、洗濯・料理・片付けと掃除・…

景色を作る日々

‪今年書いた詩をまとめてたら、つぎの詩集つくれそうな気配があった。来年に出すことができたらいいな。‬いつも、完成して出番をもらえた作品というのは私の中で存在感が皆無になるので、まとめようなんて師走だろうが思わない。今回はさきになんとなく詩集…

納まらないで、仕事。

仕事を納める気が皆無だ。そもそも仕事納めなんてものは毎日決まった時間にきちんと働き、そしてそれが日々強いられている人たちのためのものであって、私みたいにさぼろうと思えばさぼれるしやろうとおもえば24時間勤務も可能な立場において、納めるもな…

悪いことぐらい自分で考えろよ。

差別や偏見の何が気持ち悪いって、自分で考えてないっていうことだと思う。自分の口で、態度で、その悪意を表明しているのに、自分で考えていない、他人もみんなそう思っているっていう後ろ盾があるつもりで、そこから思考を引用したつもりで省エネしている…